「ロード・ロス」を読んで

 ダレン氏の新作「ロード・ロス」はおもしろいけど、ちょっと残酷なファンタジーです。
 この本はとても印象強いのですが、その中でも一番印象に残る場面は、人狼病にかかってしまった友達(異母弟)のビルEを元にもどすために、少年グラブスが悪魔のロード・ロスとチェスで対戦する場面です。この場面では、グラブスがチェスをしている間、グラブスのおじ、ダービッシュおじさんがロード・ロスの手下のアーテリーとべインを相手に戦っています。
 もし、私がグラブスの立場にいたら、私はチェスが下手なので、すぐにロード・ロスにやられてしまいそうです。でも、もし私がダービッシュおじさんの立場にいても、魔術も使えないし、武器も使えないので、アーテリーとベインに八つ裂きにされてしまうでしょう。もし、私がこの場面にいたら、おりに閉じ込められて勝負を見ていたビルのように、何もできないでしょう。もし私がビルEで、ビルEがその状況を理解していたら、とてもくやしく思うでしょう。それは、仲間が自分のために命を懸けてまで人狼病からビルを助けるために戦っているのに、自分は何もできないからです。
 グラブスは初めのほうで、両親と姉の無残な死体を見てしまいます。お父さんとお母さんは、狼人病にかかった姉のグレッタを助ける為に、ロード・ロスと対戦しますが、負けてしまい、殺されてしまったのです。だから、ダービッシュおじさんはグラブスに選択肢を与えたのですが、それでも戦うと言いました。
 私は、グラブスの決心は、とても勇気があったと思います。もし私が同じ状況にいて、同じ選択肢を与えられたら、迷わず悪魔と戦うことを否定していたと思います。
 グラブスは勇気がありますが、残酷なところもあります。家族が殺される前に、お姉さんのグレッタのタオルに、腐ったネズミの腹わたを付けるといういたずらをしました。私は、この場面では「ぎょっ」としました。いたずらにしては残酷すぎると思いました。でもグラブスは、お姉さんが死んだ時、いたずらの事をあやまれなかった事をとても後悔していました。この時、私は、やっぱり姉さんのことを愛していたんだなと感じました。
 私はダレン氏の作品が大好きです。ダレン氏の本は、本の世界に入りやすく、とてもおもしろいと思います。私はこの本をホラー好きやファンタジー好きの人におすすめします。ぜひ読んでみてください。
デモナータ 1幕 ロード・ロス Darren Shan,“Lord Loss, The Demonata”
(橋本恵、訳。田口智子、絵。小学館