リズム

 私はアメリカの中学校が夏休みに入った六月の末から八月まで、日本に帰って東京都の中学校に一時入学をしていました。クラスの半数が小学校一年生からの仲間たちでした。色々と楽しいことや、みんなで一緒に取り組まなければならないことなどが、たくさんありました。そんなある日、渋谷の本屋で読みたい本を探していたら、母から一冊の本が手渡されました。そして、
「この本、面白いわよ。あなたも大きくなったんだし、共感できるような話だから。」と言われたのが、この「リズム」で、日本で読みました。
リズム
 「リズム」は中学校の女の子の話です。私も中学生なので、主人公と同じような体験をしたことがあります。夏休みの最後の一週間に宿題が残ってしまったことも同じです。だから、母が言ったように、この本はとても共感できる内容でした。
 主人公の中学生、藤井さゆきには、第二のわが家とも言える大好きな親せきのおじちゃんとおばちゃん、そしてその子供(いとこの真ちゃん)の家があります。ある晩、さゆきが自宅で夜中にトイレに入っていたら、父親が酔っぱらって帰ってきました。そして、その親せきのおじちゃんが家に帰ってない、と母親に言ったのを聞いてしまいました。おじちゃんは離婚するかもしれない、とも父親は言っていたので、さゆきはびっくりして、トイレから出られませんでした。
 私は、さゆきみたいに、いとこの真ちゃんとこの家族が好きだったら、このようなことを聞いてしまったら、とても悲しむと思います。その理由は、自分のいとこの家族がバラバラになってしまい、第二のわが家がなくなるからです。そして、自分がトイレにいたことを知らない両親に、聞いてはいけない話を立ち聞きしてしまったという事実を正直に話した方がいいか、いけないのか、悩むと思うからです。
 それから、さゆきは九月の末に買い物をしていた時、真ちゃんにばったり会いました。その時、
「おじちゃんとおばちゃんは元気?」
とさゆきが聞いたら、真ちゃんは、お前は考えていることがすぐ顔に出るんだな、と言いました。そして、
「隠し事するんなら顔も隠しておいた方がいいぞ。」
と言いました。つまり、自分が真ちゃんのお父さんとお母さんのことを知っている、と真ちゃんにばれてしまったのです。
「本当なの、離婚するって?」
と、さゆきは聞きました。すると、
「一緒でも、ばらばらでも、元気な姿を見せてくれた方がいい。お前の方が家になじんでいたよな。」
と、真ちゃんが暗いことを言ってしまいました。さゆきがかわいそうに思いました。

 十月になって、真ちゃんからさゆきの所に電話がありました。来月、新宿に引っ越すと言っていました。その次の日、さゆきの同級生で、魚屋の息子のテツが学校に来ていませんでした。テツはよくいじめられていました。前の日にクラスでいじめがおきていました。テツが色鉛筆を盗んだと、クラスの同級生たちが疑ったからです。さゆきはテツがいつも隠れる場所を知っていたので、一人でテツを探しに行きました。その前までは、さゆきもテツをいじめていたのに、なんでいきなり優しくなるのか、私は読んでいて、不思議に思いました。
 テツが強くなりたいと言っていました。さゆきに、真ちゃんの分までそばにいてあげる、とテツが言っていました。テツがいきなり強気になったので、私も、さゆきのようにびっくりしました。ここのエピソードも主人公のさゆきに私が共感できる部分です。
 さて、とうとう真ちゃんが引っ越す前日がやって来ました。二人で海に行きました。真ちゃんの家へ帰りに寄ったら、真ちゃんが
「自分のリズムを大切にしろ。」と言って、さゆきに自分の大事なドラムスティックをプレゼントしました。そのドラムステイックは、真ちゃんが音楽を習っていたとき、尊敬している先生にもらった宝物です。
 私も自分のリズムをたいせつにしよう、と考えました。私にとってのリズムは、自分が自分であることです。そのために、「ワン・ツー・スリー」の音楽、その音符の一つ一つを一生懸命、心の中で歌い続けたいと思います。これからも、自分という音楽を大切に鳴らし続けたいです。
リズム (講談社青い鳥文庫)森絵都著、講談社