遊戯王カードで始める日本語(4)

公式ルールガイド



(2)語彙・文
 つぎに、漢字のほかにどのような日本語の学習が出来るのか、見ていきたい。現在、私の手元に予習用に持っているカードについて検討した。その結果が〔資料5〕「遊戯王カードの語彙」である。語彙は品詞別に配した。品詞という用語は本来、厳格に使用されなければならないものであるが、ここでは、日本語を教えるための単語の分類(それも私流の)という程度に考えていただいて、異論のあるかたにはお許しを願いたい。

  • (1)名詞‥語彙の学習の中心になるのが質量ともに名詞である。遊戯王カードでは、語彙を便宜上、「カード名」「モンスター用語」「カード用語」「その他」に分けた。
  1. カード名‥カード名は固有名詞だから意味が分からなくても許される。もっとも意味が分かるカード名はここに入れず、「その他」に入れた。
  2. モンスター用語‥カード名の上位分類またはモンスターの性格を表す専門用語。カードの運用上重要な意味を持つ。
  3. カード用語‥カードを運用するための専門用語。一般に使う語もあるが、カードではカード用の意味がある。漢字の項で上げた「召喚」はここに入る。
  4. その他‥一般的な意味で使われる語。

 この、「モンスター用語」と「カード用語」がテクニカルタームで、これに(英語であっても)精通している生徒は常に勝ち、分からない教師は常に負けるのである。ところが、生徒の弱い「その他」は教師の得意とするところで、ここに互いに教えあうという状況が発生するのである。

  • (2)動詞‥「〜を」によって動作が補われる動詞を「他動詞」とし、その他の動詞を「自動詞」とした。「二他動」は目的語を2つ取る他動詞で、「〜に〜を‥」という文型に使われる動詞である。「自他動」というのは自動詞にも他動詞にも使われる動詞で、「〜が‥」でも「〜を‥」でも使われる動詞である。「補助動」というのは動詞に後続して、その動作がどうなっているかを表す補助的な意味を表す動詞。動詞は少ないサンプルの中で、よくもこれだけというほど、豊富な種類が出ている。
  • (3)形容詞‥形容詞はゼロと言っていいくらい、このテキストにはまともな形容詞が無い。「な形容詞」(形容動詞)らしきものはあるが、通常の活用形ではなく、「〜なる」という名詞を修飾する古語風の活用形しか出てこない。連体詞に入れてもおかしくないほどである。また唯一ある「無い」は「有る」に対する語で、一般の形容詞とは区別される語である。
  • (4)助詞‥名詞の後ろについて、その名詞に意味を添えたり、文での役割を表したりする語を「助詞」とした。基本的な格助詞はもちろん、助詞的に使われる熟語もこの中に入る。助詞も、少ないサンプルの割にはいろいろなものが示されている。
  • (5)連体詞、副詞、接続詞‥説明に使われる少数の言葉だけが見られる。カードという限られたスペース内の文であるためか、殊更な修飾など、冗長な表現は避けられているようである。
  • (6)活用形‥活用語の語幹に後続することばをまとめた。活用形から見ると、遊戯王カードの文は普通形の叙述文だけである。叙述文というのは、「これ、本」という単語が並んでいれば、「これは本だ」。「わたし、きのう、としょかん、いく、ほん、よむ」では「私は昨日、図書館に行って本を読んだ」という文が容易に推測できる文である。しかもカードには「何が何だ」と「何が何する」のみで、状況や情緒を表現する「何がどうだ」という形容詞文は、出ていない。日本語学習の難関である「活用形」が最も単純な、普通形の叙述文に固定されているので、生徒は、文の構造に捉われることなく、多くの語彙に触れることができる。このことは、カードの遊び方を知っている人にとっては、単語さえ分かれば、どんな機能のカードであるか、およそ見当がつくことになる。初級の学習も終っていない生徒でも驚くべき読解力を示すわけはここにある。(続く)→http://d.hatena.ne.jp/kokuda/20090801

(1に戻る)→http://d.hatena.ne.jp/kokuda/20090704


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  • ※注‥〔資料〕の必要な方は差し上げます。このページのコメント欄を使って連絡してください。コメントは管理者が公開を承認するまで公開されません。

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