読み教材としての学級通信(1)

はじめに
 今日の昼食で、おいしいお弁当をいただきましたが、おいしく炊けたご飯に、これまた、おいしくできたおかずがバランスよく入っていました。外国でこんな素敵な日本の弁当がふつうに食べられるということだけで、感激してしまいます。
 継承語が、外国で日本のお弁当をいただくようなものとしたら、私の実践報告は、あのお弁当のお惣菜を、少しづつ、ばらばらに手探りで作って、出しているようなもので、はたしてそれが弁当になるかという疑問をいだきながらの発表でございます。煮ても焼いても食べられないものもあるかもしれませんが、もしそうだとしたら与えられた生徒こそ、いい面の皮でございます。
 継承語をご研究の先生がた、現場にいらっしゃる先生がたにもご試食いただき、すこしでも弁当らしきものにしていくのが、最初に食べてくれた生徒への恩返しだと思いますので、よろしくご批評のほど、お願いします。


1、「学級通信」を読み教材に

(1)生徒は学級通信で学んでいる
 『学級通信』は、その日の学習・宿題・学校生活・教師のメッセージを書いた、生徒・保護者向けの、クラスのニュースレターです。内容としてはそれだけですが、日本語で書かれたものに接する機会の少ない生徒にとって、『学級通信』は、数少ない日本語のテキストとなっています。たとえば、「きょうの学習と宿題」ですが、日本語の簡略な書き方や、箇条書きの方法などは、国語の時間でも特に教えているようでもなく、外国語としての日本語教育でも、中級以降にならないと習うことはありません。また、注意書きの場合、教師はまず、口頭で注意事項を話しますから、生徒は「書くとこうなるのか」と、話しことばと書きことばの違いにも気がつきます。生徒は『学級通信』で日本語を学習しているのです。
 それなら、もっと積極的に、日本語の運用能力を高め、しかも、生徒の役に立つ「読み物」として、『学級通信』を考えてもいいのではないでしょうか。

(2)読み教材としての学級通信
 では、どうすればいいか。生徒は多文化の中にいます。生徒は、平日、アメリカの学校に通っています。日本の体験が絶対的に少ないのに、一週間に一度しか通わない学校で、日本の学校に準ずる学習成果を期待されているのです。
 そんな生徒に役に立つ「読み物」とは、国語と背景の日本文化をもっと知り、今住んでいるアメリカや毎日使っている英語からも関連して、日本経験を少しでも補充できる読み物ではないだろうか、一週間に一度の機会に可能なかぎり興味と集中力を持って勉強してほしい、そんなメッセージを発信できる『学級通信』ができないだろうか、と思いました。
 ご存知のように、外国人のための日本語教育では「日本ではどうなのか」という事を教える「日本事情」という科目(下はその教科書の例)さえあるし、アメリカのナショナルスタンダードには、外国語学習の内容がコミュニケーションや文化をも超えて幅広く決められています。
 それなら、今、日本語教師会で取り組んでいる継承語のための読み教材のベンチマークと重なります。実際、生徒の中には、当地で生まれたり、日本の学校の経験が極めて少ない長期滞在者も少なくありません。短期滞在の生徒も、内容次第では、新しい見方として満足してくれるのではないか、と思いました。何よりも、毎週、生徒に与えるテキストですから、その場の思いつきよりも、学問的な裏づけと多くの方の経験によって出来たベンチマークに添って書くほうが間違いありません。
 それでは、つぎに作成過程を申し上げます。
(続く)→ http://d.hatena.ne.jp/kokuda/20080712

日本事情入門 (アルクの日本語テキスト)
この文は、つぎの会で発表された研究発表の内容要旨です。
International Conference on Japanese Language Education
Post-ICJLE Conference -Japanese Heritage Language in the 21st Century-
August 7&8/ 2006.Japan Society, New York.


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