読み教材としての学級通信(4)

 では最後に、通常の教科書(参考書)と比較して、『学級通信』の特色と可能性を申し上げて、まとめとしたいと思います。


4、学級通信の可能性


(1)すぐにできて作りやすい。
 教科書に限らず、一冊の本を作るのには大変な時間と労力を要します。ところが、学級通信は通常一枚です。いろいろな情報を入れるので、読み物として書くエッセーはぜいぜい800字です。しかも、全体としての構成を考えなくても、継承語教材のベンチマークによってテーマが絞られているせいか、年間を通じて見ると、まとまった物になっています。学校の行事や授業だけでなく、時事や状況の変化にすぐ対応できるのも特長だと思います。
 また、生徒は宿題などで多くの作文が課せられています。宿題を課すほうの教師も、「今週は何を読んでもらおうか」と思いながら作文をしても、いいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 
(2)授業で使わなくてもよい。
 毎週作られる『学級通信』は授業の教材ではありませんから、通常は、授業が終わったあとの「帰りの会」で配られます。
 私は、学級担任をしているクラスでは国語を教えていません。クラス担任としての私は、科目の先生方と生徒をたすけ、教えやすい学級・習いやすい学級を作ることが使命ですから、『学級通信』もそのために存在します。クラスからの重要な伝達事項はたいてい『学級通信』に書かれますから、確認のために読み合わせをする事になりますが、この読み合わせの時間が隠された継承語の時間なのです。最近では「読みたい」という生徒も出てきて、学習の幅がひろがりつつあります。

(3)インターネットの利用
 継承語研究会で中間報告をいたしましたところ、先生がたから、ホームページを作って公開したらどうか、と勧めていただきました。ベンチマークの第一に挙げられている「コミュニケーション」とは、本来、双方向で行われるものですから、それを読み物で実現するにはどうしたらいいだろうか、と悩んでいた時でした。
 そこでブログを利用したホームページを作ってみました。ご存知のように、ブログはインターネット上の交換日記です。学級通信は日付がありますから、日記には違いありません。ただ、だれが見るかも分からないということも考慮して、個人や授業の詳細にかかわることは伏字や省略を行いました。
 ブログには、ベンチマークに従って書いた全部の『学級通信』を掲載していますので、本日、取り上げなかったものもご覧いただけます。皆さんも是非、一度、ご覧になってくださるよう、お願いします。教室のそとの方にも参加してもらうと、コミュニケーションの幅が広がり、「読む」以外の技能「書く、話す、(聞く)」の養成に役立つものになってくるのではないかと思います。

おわりに
 NECTJ(北東部日本語教師会)の研究会では、継承語をはじめ、ほんとうにいろいろな勉強をさせていただいています。それで、どこかで貢献できなければ、熱心に取り組んでいらっしゃる方に、申し訳ないと思っていました。ところが、貢献どころか、教材ができあがる前から、真っ先にその成果を使わせていただき、一番の恩恵を受けてしまいました。
 本日のレポートを「ベンチマークを使った読み物の一つの形」とでも見て下さり、ご批評いただけたらありがたいと思います。そうして、この『学級通信』が、今まで以上に生徒のために活用できるものになれば、生徒への恩返しもでき、これにまさる喜びはありません。(終)August 7&8/ 2006.


参考図書
2005-2015: Realizing Our Vision of Languages for All (ACTFL Foreign Language Education Series) ACTFL 2005-2015: Realizing Our Vision of Languages for All
(Actfl Foreign Language Education Series)

1回目にもどる→ http://d.hatena.ne.jp/kokuda/20080705



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