遊戯王カードで始める日本語(2)

公式ルールブック



3、学習方法


(1)遊戯王カードを読み教材に

 今あるカードを読んでも何のことか分からないのに新しいカードを読んであげることなどできない。私は途方にくれた。
 やがて、「これは専門書の講読だ。教えようとしないで、生徒がやるのを出来る範囲で手伝ってあげればいいのだ。」と自分を納得させた。10分間のカードタイムはカードを読む時間になった。生徒にとっても、勝負にならないゲームより、1枚でも多くカードが分かる方が実利がある。準備としては、まず、小さな文字を原稿用紙に大きく書き直して、生徒が文字を読めるようにした。授業中は、それを生徒と二人で読むのである。
 カードを読む学習は、教師が読み生徒が読み、意味を確認していくという通常の読みの授業のように進められたが、全体の意味が分かれば、生徒は教師に分かったことを英語で聞かせてカードの使い方を確認する。生徒にとっては、瞬時の判断を争うゲームで少しでも自分の理解に狂いがあれば重大問題だから、カードに書かれた情報を正確に知る必要がある。「およそ分かれば次に進んで全体として読解力を高める」という通常の「読み」のクラスとは異なる点である。奇妙なことに、教師が読み、生徒が読み、単語の意味を確認していくと、教師のほうはまだ分からないのに、生徒はもうカードの機能を解していることのほうが多い。習う方が教える方より先に分かる不思議な読解力である。
 ここで終われば、生徒はいつまでもカードの情報を一人で得ることができない。そこで、これを「学習」とするために、(1)「最後に生徒が全文を読む」活動を加え、(2)「読んだカードの文を書いてくる」という宿題を課した。
[rakuten:surugaya-a-too:10072073:image]‥〔資料1〕カードの例「E・HEROバブルマン」

(2)生徒が教える

 以来、このカードを読むという学習が授業に入るようになった。ところが、専門用語(テクニカルターム)が多く、遊び方が分からないと読み解けない。そこで、私はマニュアル(攻略本)を手に入れ、生徒の助けを借りつつ、勉強することにした。そうしないと、生徒の解釈に自信を持ってOKと言ってやることが出来ないからだった。この、教師が習い、生徒が教える時間も授業に組み入れた。
 「生徒が教える」という教授法は、最近の学習者中心の教育では常に採用されているが、コミュニケーションギャップなどの練習の一方法であったり、教師がやったほうがよほど早く分かることを生徒に「教育」としてやらせている場合が多いように思われる。ところが、遊戯王カードの場合は教師のほうに習う必要があった。生徒にしても、少しでも対戦相手に手応えがあったほうが良い。私もやるからには、いつかは一矢報いたい。本当に分からないことを本気になって聞くのだから、生徒も真剣に分からせようと教えてくれる。そのけなげな姿は私の励みとなった。
 また、授業進行上、「教師:このカードの名前は何ですか。生徒エレメンタルヒーロー、バブルマンです。」「教師:攻撃力は?。生徒:800ポイントです。」のようなカードに関する問答も入る。
 このように、生徒が持ち込んできた全く新しいタイプの教材は、授業を次第に変えていった。(続く)→ http://d.hatena.ne.jp/kokuda/20090718
(1に戻る)→http://d.hatena.ne.jp/kokuda/20090704

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