ワシントンの桜の木

 19日はアメリカの初代大統領ジョージ=ワシントンにちなむプレジデントデーです。ワシントンは少年のころ、桜の木を切ったことを告白したら、正直者だとほめられたという話が有名です。本当は作り話だそうですが、おかげで、ぼくはひどい目にあいました。
 父は盆栽が趣味でした。庭は盆栽だなと温室で埋めつくされ、毎日の世話が欠かせないので一泊旅行にもめったに行かないほどでした。盆栽は広大な森の情景が一つの鉢(はち)に凝縮してあるので、プラモデルにはもってこいの遊び場でした。ところが、遊んでいるうちに手がひっかかり、枝を折ってしまいました。盆栽は木の生命力が人の手入れを得て、長い風雪をかけて作る芸術品なので、どんなにしても元にもどすことはできません。
 ワシントンの桜の木を思い出して、「あわい」期待で告白しました。ところが、父は烈火のごとくおこりました。母もとりなしてくれましたが、いかりはおさまりません。とうとう「ぼくと盆栽とどっちが大事なんだ?」と言ってしまいました。禁句でした。父は「おまえみたいな、きのうやきょうのつきあいだ。盆栽とは小学校4年からだ。‥。」と、表情をくもらせました。家族じゅうが夜まで気まずい一日になりました。
 そんな、父と苦楽をともにしてきた、しあわせな盆栽も、やがて、ぼくたちが進学、結婚、引越し‥‥と、何かをするにつれて、くしの歯がぬけるように減っていきました。
 みんなは、ご両親の『盆栽』を大切にしてほしいと思います。
(上の絵は市販の絵葉書から)


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<今週の学習と宿題>
(省略)