故郷

役に立たないように‥

人が安心して暮らすには、治安の維持が欠かせません。日本も最近は治安が悪化してきたようですが、気になるのは、町の見張りをする交番(派出所、駐在所)が人の住む町から離れた所に移って行っていることです。 私の生まれた町でも、町の中心を通る街道ぞいに…

来た時よりも美しく

家(うち)に風呂ができたのは夏に雨が降らず、断水のため、風呂屋(銭湯)が閉まった時でした。それまでは風呂屋が休みの日は、遠くの風呂屋に行ったり、風呂のある家で「もらい湯」をしていました。もらい湯をする時、父はきまって「『ありがとう』だけを残…

ごろんぼずいか

子供の悪口に「あほぼけなんきんかぼちゃ」というのがありました。「なんきん」も「かぼちゃ」も大きく見えても中が空っぽの、同じ野菜の別の言い方です。かぼちゃは英語ではパンプキン(pumpkin)ですが、「中身が無いのに、からいばりするやつ」という悪口に…

顔を浸けるな

夏休みが終わりました。日本の学校では、2学期の初めに水泳の競技会をする所が多いようですが、学校のプールは、日本にあってアメリカに無い物の一つです。学校の水泳では、「水に親しむために」顔を水に浸(つ)けることから始まります。水に浮かんだら、ク…

二毛作

場所にもよりますが、日本では、こいのぼりが終わるころから、田んぼに水が入って田植えが始まります。 かつては、5月から6月にかけては麦が実り、子供は、黒く墨(すみ)のような粉を噴(ふ)いた病気の穂を見つけては相手の顔にひげを描くのが楽しみでした。…

走り幅跳びの初歩

水田には水の管理が欠かせないので、日本では田んぼのある所には必ず用水路があります。僕の生まれ育ったのは扇状地の真ん中にある町で、田んぼのまわりだけでなく、町じゅうに用水路が通っていました。用水路の幅(はば)は、狭い所では50センチほどでした…

お茶

明治維新を進める日本は、欧米のキリスト教にあたる、近代を支える思想を日本発祥の神道(しんとう)に求めました。その結果、千年以上も日本の思想や文化に大きな影響を与えてきた仏教の地位が落ちてしまいました。みんなに恨(うら)まれるようなお坊さんも…

新米のにおい

米のにおいをかいだ事がありますか。 米を袋(ふくろ)から米びつに入れる時、ザーという音と共に米と「ぬか」のにおいが立ち込めます。ハロウィーンが過ぎましたが、11月のはじめは日本では連休で、故郷では、この時に人手(ひとで)の要る稲刈りをしました。稲…

在原神社の鉄くず

千早ぶる神代もきかず龍田川 からくれなゐに水くくるとは を詠んだ百人一首の歌人、在原業平(ありわらのなりひら)が住んでいた所は今、在原神社(写真)という小さな神社になっています。 在原神社の周囲は、戦後長く、くず屋の鉄くず置き場でした。その頃く…

かしわもちとちまき、どっちが好き?

五月の空に泳ぐ鯉幟(こいのぼり・写真上)は日本中で見られますが、故郷では、鯉幟の竿(さお)が特別でした。男の子の初節句には、頂頭だけ緑の葉を残して、皮をむいた杉の竿を立てます。緑色の頭をつけた真っ白な竿と新しい鯉幟は、五月の空に映えて、目…

つるのおんがえし

日本ではこのごろ大雪だといいます。景色をすっかり白くする雪には、昔からいろいろな話が伝わっていますが、「つるのおんがえし」もそんな中の一つです。 来週、2月15日と16日にブルックリンのカンブル劇場(Kumble Theater)でアメリカのダンスチーム…

あけましておめでとうございます

故郷では、お正月には家中(うちじゅう)の神様に鏡餅(かがみもち)をそなえました。 世界を始めたという神様と、かもいの上の5つほどの神様はふだんも目にしますが、お正月にはさらにたくさんの神様が現れます。まず、家(うち)の中心に大きめの鏡餅をそなえま…

二宮金次郎

先日、RO君が日本の古いお金をたくさん持って来てくれて、クラスのみんなで見せてもらいましたね。「古い」といっても、長い日本の歴史から見れば、明治時代以降の新しい紙幣でしたが、めったに見かけない貴重な物ばかりでした。 その中で、おぼえのある一番…

いただきます

昼休みの個人面談がはじまって、お父様やお母様と楽しく充実した時間を過ごしていますが、残念なのは、みんなといっしょに昼ご飯を食べられないことです。昼食の時間には、授業では見られないみんなの笑顔やいいところがたくさん発見できるからです。 ご飯の…

菊水の紋(もん)

2学期の歴史の勉強は「イイクニ作ろう鎌倉幕府」から始まりました。「幕府」の「幕」は戦場の陣地に張る「幕(まく)」です。戦いでは、敵味方をはっきりさせるために、幕(まく)や幟(のぼり)に自分たちのしるしをつけました。この「しるし」はみんなの…

ひまち

秋、日本ではあちこちで祭が行われていますが、故郷では「ひまち」という近所だけの小さな祭がありました。祭の神様は一本の掛け軸です。小さな机の引き出しに入っていて、一年ごとの持ち回りで、家庭で保管されます。その日の夜、神様は一年ぶりに取り出さ…

親孝行するか?

中学最初の夏休み、元気にすごしていますか。 僕が中学生になって、はじめての夏休みは、ちょっとかわった登山でした。県の南部に山上ヶ嶽(さんじょうがたけ)という山があります。その頂上は山伏(やまぶし)が修行するところになっていて、大峯山(おおみ…

すいか割り

今日で1学期が終わり、「夏の集い」があります。集いのハイライトは幼稚園から中学三年まで縦割り班に分かれての西瓜(すいか)割りですが、僕は西瓜割りをしたことがありません。 子供のころ、僕の故郷は日本でも有数の西瓜の産地で、叔父(おじ)の家でも西瓜…

高松塚というお墓

古墳時代も後期の7〜8世紀になると大きな古墳が作られなくなり、お棺(かん)を入れる石室も人一人がやっと入れるほどの小さなものになります。日本で初めて彩色壁画が発見された高松塚古墳(明日香村)も、そんな、ごくありふれた小さな円墳の一つでした。 …

世界遺産「ぽいとこな」

春分の日(今年は3月21日)、お彼岸のおはぎはおいしいのですが、仏壇にそなえたあとだと、線香のにおいがついて、おいしさが半減します。それでもそなえた後でしか食べられないので、線香のない神さんにそなえたほうに人気が集まります。 この「おはぎ」、…

ワシントンの桜の木

19日はアメリカの初代大統領ジョージ=ワシントンにちなむプレジデントデーです。ワシントンは少年のころ、桜の木を切ったことを告白したら、正直者だとほめられたという話が有名です。本当は作り話だそうですが、おかげで、ぼくはひどい目にあいました。 …

おにはそと、ふくはうち

問題…今日は、幼児部の子供たちが「まめまき」をしましたが、節分を英語でいうと、明日が「立春」ですから、“the last day of the winter”でしょうか。旧暦では、年の初めの「元日」が、去年は1月29日、今年は2月18日、と毎年動きます。けれども、節分は同じ旧暦な…

小正月

1月15日は小正月。小正月といえば、しめ縄を燃やす「とんど」でした。町ごとに「ここ」ときまった場所があり、うちは「新池の地藏さん」の前でした。とんどの係は、どの家でもたいてい子供で、大手をふって朝から近所のみんなと遊べる祝日でした。 しめ縄も、…

書初め大会

隣町の神社(写真)の書初めに参加したことがあります。書くのは近くの小学校でしたが、表彰式は神社で行われました。その神社は神様をまつる神殿が近年まで無く、一辺が15メートルほどの四角の、はききよめられた地面が御神体(ごしんたい)でした。「四角い…

秘蔵の地へ

明けまして、おめでとうございます。年の初めにみんなとぜひ、やりたいのが「新年の抱負」です。「今年は○○をやるぞ。」という目標を心にしっかりときざみつけて、毎日のかてにするのは大切なことです。 学年が始まってから9カ月が過ぎました。4月に中学生に…

運動会と紅葉

小学校4年の時、学校に鼓笛隊ができて入りました。運動会は長い練習の発表会でもありました。曲は小学唱歌の「紅葉」(作詩高野辰之、作曲岡野貞一)などでした。 今、育英の運動会の写真が毎週、校舎入り口で展示されています。教室で見せる顔も教室では見せ…

おしょらいさん(精霊)

昨年の人口統計がまとまり、日本の人口がはじめて前の年より減ったことが数字で出たそうです。人が少なくなるという、今まで日本人が歴史の中で、まったく経験しなかった新しい時代に入ったのです。子孫がいなくなるとどういうことになるか、もうすぐ、お盆…

みたらし

独立記念日の7月4日にはあちこちでバーベキューパーティーをやっていましたね。バーベキューはメモリアルデーからレーバーデーまでだそうで、日本では「みたらし」のシーズンです。 日本の食料品を売っている店に行けば、丸いだんごを4つずつくしに刺してし…

夏が来れば思い出す‥

奈良県の小瀬(おぜ)に、奈良時代の僧「行基(ぎょうき)」の墓があります。このお寺の住職は遠縁で、父の親友でした。よく行ったり来たりして、二人で、共通の趣味である盆栽の世話をしながら、「だいぶっさん、だれがつくったか知ってるか」「聖武天皇さん」…

最初の米

日本では、5月の連休のころに田んぼをたがやして、苗代(なわしろ)を作ると、今頃はわずかに芽が出始める頃でしょうか。あと10日もたてば、はえそろって、緑の絨毯(じゅうたん)が水に浮かんでいるような景色があちこちの田んぼで見られます。(写真はmakimas…