マッハのつばさ

 中学の科学の授業は「音」の学習からでした。
 音の速さは、いろいろな条件で変わりますが、海面上の気温15度の空気中で秒速343メートル、時速になおすと約1225キロメートルです。高速では、空気の流れは音速との比率(マッハ)によって変わるので、高速機の速さは「マッハ」であらわします。ジャンボジェットの最高速度はマッハ0.92です。
 飛行機が高速で飛ぶためには、つばさにも特別な工夫がいります。昭和54年(1979)アメリカの国立航空宇宙局(NASA)は、自分たちのつくった翼(つばさ)を「スーパークリティカル翼(よく)」と名づけて世界中の特許を独占しようとしました。ところが、日本では、すでにその翼は「層流翼(そうりゅうよく)」という名で、36年も前にできあがっていたのです。
 層流翼を世界最初につけた飛行機は昭和18年(1943)製の「強風」ですが、そのころ、日本中の都市を焼きつくしていたB29をむかえうつ飛行機として「キ94」が試作されました。キ94は量産前に戦争が終わりましたが、設計主任の長谷川龍雄は戦後トヨタに入り、パブリカ、カローラ、カリーナ、セリカなどを生み出します。長谷川が書いた層流翼の論文があったので、NASAは特許が取れず、日本の科学技術が発展する大きな力になります。
 「空襲にさらされている国民を一人でもたすけたい。」という気持ちで作られた翼が36年後に息をふきかえして、人々の生活を豊かにする力になった、と考えてもいいのではないかと思います。
(絵は小池繁夫の描くキ94)


<今週の学習と宿題>
(省略)


予定
○来週5月12日‥育英オリンピックが続きます。
○再来週5月19日‥授業参観、懇談会。