遊戯王カードで始める日本語(6)

公式ルールガイド



5、学習内容の偏りとナショナルスタンダード

 このクラスの学習目標は、「身の回りのものを日本語で表現し、日常の日本語でのコミュニケーションができるようになる。」であった。動機付けの継続のため、遊戯王カードを使った学習を始めたところ、学習漢字が約90パーセントを占めるなど、当初の学習目標に合った日本語学習と重なる部分も少なくないことが分かった。ところが、異なり漢字では学習漢字全体の18パーセントで、これが遊戯王カードだけで100パーセント近くまで数字が上がるとは思えない。使用語彙や文体も、一般的に使われている物を採用しているとはいえ、身の回りのものを表現するには大袈裟すぎる。また、文型は普通形叙述文のみである。そういう意味で、遊戯王カードの学習では偏りがある。
 では、偏りとは何か。成人の外国語の学習では、はじめにニーズ分析を行い、それに基づいて学習目標が立てられる。日本語学習で、よく知られている「技術研修のための日本語」から、生活言語として学ぶ「実用日本語」、オフィスで使う「ビジネス日本語」、「理工系の日本語」などの分野まで出来ているようであるが、これらは、学習目的に応じた偏った日本語の学習である。
 私のクラスの場合、生徒は遊戯王カードを心から楽しんでいるし、そこで使われている日本語は学習目標を大きく逸脱しているわけではない。そのような場合、学習目標に到達する前の一過程または一方法として、「遊戯用カードが分かるための日本語」という偏った学習があってもいいのではないだろうか。
 また、見方を変えると、この遊戯王カードを使っての日本語学習は、現在、米国の公教育の評価法であるナショナルスタンダードの5Cを〔資料7〕のように満たしている。このことから、遊戯王カードは公教育でも適切な指導さえあれば、教材として使えるものであるといえる。(続く)→http://d.hatena.ne.jp/kokuda/20090815
(1に戻る)→http://d.hatena.ne.jp/kokuda/20090704


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  • 上の絵は「遊☆戯☆王デュエルモンスターズ公式ルールガイド」の表紙→ asin:408782134X

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