雅楽は、以前は、もっと生活に結びついた音楽でした。ですから、ふだん使っていることばの中にも雅楽から来たことばがあります。たとえば‥‥。

○やたら‥‥雅楽の拍子(ひょうし)に「八多羅(やたら)拍子」という5拍子があります。これは2拍子と3拍子の組み合わせで、笙(しょう)なら「2拍吹いて3拍吸う」むずかしい拍子です。手拍子に合わず、必要でもないことをめちゃめちゃにやっているようにも聞こえるところから、ほかのことでも、このことばが使われるようになりました。「矢鱈」は当て字です。

○打ち合わせ‥‥応仁の乱(1467)で都が戦場になったため、多くの演奏家が都を離れました。それでも、宮廷で雅楽があるときは、本番前に集まって、曲目や演奏法など、リハーサルをしなければなりません。打楽器のリズムが基本になるので、そのことを「打ち合わせ」といいました。

○頭取(とうどり)‥‥雅楽では各楽器の楽長(パートリーダー)を「頭取」といってきました。このことから、ひろく、分野・組織をまとめる人を「頭取」というようになりました。

○ろれつがまわらない‥‥雅楽の音階で、呂(ろ)の音は低く、律(りつ)の音はとても高い音です。(特に笛で)呂の音を出したあと、すぐに律の音を出すのはむずかしく、できなかったら、「呂律(ろりつ)が回らない」といいました。

○おつな‥‥乙(おつ)の音は中低音で、音合わせの基本音です。この音がそろうとほんとうにきれいな音楽になりますが、出ないと雅楽になりません。「乙」のように、ひかえめだが重要で素晴らしいことを「おつな」(乙のような)といいます。


[では、実際に使い方をごらんください‥‥]

頭取は銀行の打ち合わせで、ろれつがまわらないのに、やたら おつな言い方をしようとしている。


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