世界遺産「ぽいとこな」

 春分の日(今年は3月21日)、お彼岸のおはぎはおいしいのですが、仏壇にそなえたあとだと、線香のにおいがついて、おいしさが半減します。それでもそなえた後でしか食べられないので、線香のない神さんにそなえたほうに人気が集まります。
 この「おはぎ」、母の里付近のかなり広い地域(県中南部)では「ぽいとこな」ともいいます。
 使いに行った人が「おはぎ」か「ぼたもち」を食べて、あまりおいしかったので名前を聞くと、「だんご」だと教えてもらいました。忘れないように、帰る道、ずっと「だんご」と言い続けたが、小さな川があって、「ぽいとこな」と飛び越えたとたんに「だんご」を忘れて、「ぽいとこな」と言い続けて家に帰ったという話です。あまいものが少なかった時代、あまくておなかの足しになる「おはぎ」は今から想像もできないほどおいしい食べ物だったにちがいありません。
 おはぎとぼたもちは同じもので、春が「ぼた(牡丹)もち」、秋が「おはぎ(萩)」というのが正しいそうですが、母は次のように区別していました。

  • おはぎ‥もち米とうるち米を半つきにして、丸くしてあんを付けたもの。あんは中に入れても、外につけてもよい。あんを中に入れて、外側に「きなこ」を付けたものもある。
  • ぼたもち‥できあがったもちの外側にもちが見えないほどあんがついたもち。春の彼岸のころにはよもぎが出だすので、よもぎもちにすることもある。


 「あれ?思っていることとちがう。そんなこと言わない。」という人がいるかもしれません。それでいいのです。こういう言葉は共通語教育が行われていないので、その人が生活の中で使っている言い方がいちばん正しい言い方だと思います。もともとこうだ、とか、だれかが調べてまとめたことは本に書いてあります。ですから、あとで調べてもどこかに書いてあったりします。でも、お父さん・お母さん、まして、お祖父さん・お祖母さんのお話は、なかなか本に書いていません。貴重な本物の情報です。これこそ後世に伝えていかなければならない世界遺産です。大切にしたいと思います。(絵はDOLE)


参考
 「おはぎ」の周辺には次のような言葉があります。これも、尋ねてみましょう。同じだったり、ちがっていたり‥‥。

  • あんころもち‥ぼたもちの別称。大きいのを「ぼたもち」、小さいのを「あんころもち」と、区別する人もいる。
  • あんつけもち‥ぼたもちを含むこともあるが、ぼたもちと区別して、あんが少なく、中のもちが見えるもの、あんをのせただけのもちをいう。
  • だいふくもち‥あんが中に入っているもち。あんは外から見えない。
  • だんご‥(1)狭い意味では、うるち米の粉を水でねりかためて蒸したもの。(2)広い意味では、もち米以外で、もち状に固めて丸くしたもの。あんを付けようが、しょうゆを付けようが、焼いても焼かなくても、すべて「だんご」という。「もち」はもち米をついて作ったものだけをいう。


平成19年度(2007)入学式・始業式‥‥4月7日(土)
  教科書・教材配布、写真撮影。2学年授業開始。