日本文化を新発見

 知人に、カーネギーホールで日本の歌や踊りがある、と誘われました。忘れたころに大勢でやってきて、何時間も延々とやる、習い事のおさらい会ならかなわん、と思って、「プロですか。」と聞いてしまいました。
 プログラムを見ると前半は短い出し物がたくさんあり、出演者に「グループ」や「一門」の意味の「○○会」、「○○社中」という文字が見えました。やっぱりおさらい会でした。違うのは、必ず先生が演者として入って、舞台を引き立てているところです。小さい子供から高齢の婦人まで、どのお弟子さんも先生を信頼していることが見ている者にも伝わってきました。
 後半は、歌謡ショーでした。歌に合わせて数人のダンサーが踊るのですが、日本舞踊でも民謡でもない、「芝居小屋の踊り」というのがぴったりの踊りでした。歌も踊りも本当に上手でおもしろく、見ているものをぐいぐい引き寄せます。ところが、このころになると、アメリカ人が立ちだし、だんだん空席が目立ち始めました。
 もし、僕と同じように「日本の歌や踊りがある。」と誘われて、劇場に来たアメリカ人は他の人より日本通のはずです。実際、ロビーで、日本語を大学や高校で習っている人や教えている人に何人も出会いました。その人たちの多くは、日本の歌や踊りといえば、能や歌舞伎や雅楽などが「本物」で、ピアノとサックスとドラムだけで、ヨーロッパの歌である「愛の賛歌」などを派手な身振りで歌う歌謡ショーは「もういいよ」と思ったのではないでしょうか。
 最初から「おもしろい日本の歌謡ショーがあるよ。その前に伝統音楽を習っている人の演奏や踊りもあるよ。」とちゃんと誘われていれば、そのつもりで来るし、たぶん最後まで楽しんだと思います。そして、こんな日本文化もあるんだ、と新しい発見に心躍ったことでしょう。
 まさかと思いますが、主催者も「芝居小屋の歌謡ショーは本物だろうか?」と少しでも思っていたら残念なことです。すてきなショーだったのに。
(写真は主演の高千穂ひろみと華形満明)


<今週の学習と宿題>

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