ひまち

 秋、日本ではあちこちで祭が行われていますが、故郷では「ひまち」という近所だけの小さな祭がありました。祭の神様は一本の掛け軸です。小さな机の引き出しに入っていて、一年ごとの持ち回りで、家庭で保管されます。その日の夜、神様は一年ぶりに取り出されて柱に掛けられます。机はおそなえ物の台になります。各家庭から一人ずつ参加し、神様に拝礼したあとは世間話をするだけのお祭です。掛け軸には、真ん中に「天照皇大神(あまてらすおおみかみ)」、左右に「三輪大明神(みわだいみょうじん)」「春日大明神(かずがだいみょうじん)」と書かれています。
 「三輪」と「春日」は近くの神社ですが、「天照皇大神」が伊勢神宮だと教えてもらったのは、修学旅行で伊勢に行った時でした。そのころ、伊勢のおみやげといえば、「生姜板(しょうがいた)」でした。生姜をきかせた砂糖のかたまりで、伊勢の神様を表す「のし」の形になっていました。(写真上)
 今、世間を騒がせている「赤福」もちは生ものなので、神宮のそばまで行かないと買えない貴重品でした。何年か、たって、伊勢から遠く離れた駅の売店やデパートにも赤福が並ぶようになりました。家でつくもちはすぐに硬くなるのに、赤福は食べ残しても硬くならないのがふしぎでした。空港でも売るようになったので、好物でもあり、故郷の「ひまち」や修学旅行も思い出す赤福は一時帰国の定番でした。
 赤福は、「製造日改竄(かいざん)」「売れ残りの再利用」「原材料表示偽装(ぎそう)」など、会社ぐるみで客をだましていたとして、大きな事件になってきました。食の安全をおびやかす深刻な事件ですが、不正を指摘されるまで、多くの日本人が「餅は2日もたてば、硬くなる。」という簡単な常識さえ忘れてしまったことのほうが、もっと深刻です。
  食べかけの赤福


<今週の学習と宿題>
 (省略)

来週から「科学」の授業(3:00〜3:45)があります。
 11月3日‥1分野上p26〜p43「いろいろな力の世界」。
 11月10日‥2分野上p45〜p69「大地の変化」。教科書をよく読んでくること。