あとだしじゃんけん

 じゃんけんというのは同時に出すから、公正なルールとしてみんながその結果にしたがいます。これは常識です。だから、「あとだしじゃんけんはいけない、という法律は無い」と平気で後出しをされたら、だれでも怒(おこ)ります。法律に無いから何をやっても良いなら、秩序は無いも同じで、社会は成り立たなくなります。
 台湾の台中市で行われていた北京オリンピックの野球アジア予選決勝リーグ。日本は3勝〇敗でオリンピック出場を決めましたが、日本チームの魂に火をつけたのが第2戦、韓国の「あとだしじゃんけん」でした。
 この大会では、先発メンバー(出る選手の名簿)を1時間前に交換することになっていて、日本も韓国も名簿を提出しました。ところが試合が始まると、韓国側は名簿と全く違う選手に変わっていました。日本側の名簿を見て変えたのです。名簿を出した後で出場選手を変えてはいけないと大会規則に書いていないとして、韓国に対する日本の抗議はしりぞけられました。その時、星野仙一監督は「絶対に負けられへんと思った」そうです。
 試合は、日本の手の内を知って選手を送り出した韓国に苦戦しましたが、監督と選手の心の中におこった「なにくそ」という気持ちが魂をゆすぶったようです。試合後の勝利インタビューで、星野監督は声をふるわせていました。選手たちのくやしさやいかりは、試合を見守っていた大勢の日本人にも伝わりました。そのことが、選手たちをいっそう勇気づけ、「なにくそ」を力に変えたのだと思います。
 みんなも、自分でも信じられないほどの力をどこかに秘めています。「負けられへん」と思った時にその力が出てくるよう、日ごろから努力しておきたいと思います。人の努力している姿は美しく、必ず理解者を生み、いざという時の力にもなってくれます。
(写真は田崎高広さんが撮った試合中の星野監督



<今週の学習と宿題>
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