しらせ

 毎日、華氏20℉から30℉(摂氏では零下10℃前後)という寒い日が続いています。こういう日は、ライムやレモンをしぼって、はちみつを入れて熱い湯でといて飲むと、体があたたかくなり、せきも止まります。アメリカ人はイギリス人のことを「limey(ライム屋)」と悪口を言いますが、これは、体中から血が出て死ぬ壊血病(かいけつびょう)の予防に、イギリス人がライムを食べてビタミンCを補給していたからです。
 壊血病は、寒さと戦いながら北の国境を守る人たちの、もう一つの敵でした。明治26年(1893)から28年まで、白瀬矗(しらせのぶ・写真上)たちは、船が遭難したり、二つの島の越冬隊員全員が死亡したりする困難をのりこえ、千島列島できびしい冬をすごしました。生き残った人でも、壊血病精神病者も出るほどのひどい2年間でした。
 白瀬はのちに南極を探検し、アムンゼンやスコットにつぐ足跡を残します。この時、一人の犠牲者も出さなかった勇気ある探検家として、世界中からたたえられました。みんなの地図帳にもある南極の大和雪原(やまとゆきはら)は白瀬のつけた地名です。白瀬は後方の支援が貧弱なためにずいぶん苦労しましたが、責任を自分一人で取り、帰国後、あとしまつと借金の返済に一生をかけました。温かい食べ物をまったく食べなかったともいいます。
 南極観測船「しらせ」(写真下)の名は、この白瀬矗にちなみます。昭和31年(1956)から始まった日本の南極観測は、「地球温暖化」や「オゾンホール」を世界で初めて発見するなど、人類のために貢献してきました。「しらせ」は3代目の観測船で、25年間、観測隊を支援してきましたが、今、昭和基地で最後のつとめを果しています。(4代目の完成は再来年なので、来年から2年間は日本の観測船がなくなります。)
 最近の寒さは、日本にいると北海道などの寒冷地以外ではなかなか味わえません。北と南のはてで、日本人の安全と名誉のために苦労した人々をしのぶ貴重なチャンスでもあります。
 しらせ


<今週の学習と宿題>
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