お茶

 明治維新を進める日本は、欧米のキリスト教にあたる、近代を支える思想を日本発祥の神道(しんとう)に求めました。その結果、千年以上も日本の思想や文化に大きな影響を与えてきた仏教の地位が落ちてしまいました。みんなに恨(うら)まれるようなお坊さんもいたかもしれませんが、日本全国のお寺が多くの人によって破壊されました。東大寺と同じほど大きかった「内山永久寺」などは跡形も無くなってしまいました。(奈良)興福寺五重塔も売り払われましたが、金具を取るために火をつけるというので、「危ないから」かろうじて残ったといわれています。
 そんな明治8年(1875)、開成所(のちの東京大学)に入学した岡倉天心は先生のフェノロサ(Ernest F Fenollosa)を手伝って日本美術を調査しました。そして、捨て去られようとしていた日本の美を再発見し、文化財の修復と保存、日本文化の紹介に力を尽くしました。
 岡倉天心が「文化」という目に見えないものを「目に見える」一言で表したことばが「茶」でした。東京美術学校(のちの東京芸術大学)をやめたあと、ボストン美術館に迎えられますが、この時に『The Book of Tea』(茶の本)を書きました。お茶の作法から歴史、仏教との関係、流派など、読み進むうちに日本が見えてきます。近代化の中でも失ってはいけないもの、近代化のためにも大切にしなければならないものが「茶」にあるのです。
 3年生は先週「お手前」を習い、ほんの入口ですが大切にしなければならないものに触れました。『茶の本』の原文は英語。今も、日本を深く知ろうかなというアメリカ人の必読書です。日本語訳もいろいろ出ています。中学生に読みやすい口語訳もあります。読んだあとに飲むお茶の味は、きっと深みのあるものになっているはずです。
(絵はいらすとAC)
「内山永久寺之圖」→http://hikaritokage.hp.infoseek.co.jp/toba2003/eikyuji_16.jpg
茶の本 (講談社バイリンガル・ブックス)

※生徒作品は別項



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