夏が来れば思い出す‥

 奈良県の小瀬(おぜ)に、奈良時代の僧「行基(ぎょうき)」の墓があります。このお寺の住職は遠縁で、父の親友でした。よく行ったり来たりして、二人で、共通の趣味である盆栽の世話をしながら、「だいぶっさん、だれがつくったか知ってるか」「聖武天皇さん」「ちがう」「大工さん」「職人やら普通の人や」「わるいやつや。うまく人を使ったな」「行基さんがおおぜい助けて、天皇さん助けて、みんなで作ったんや」などと話していました。
 小瀬までは電車で行くと、何度も乗りかえをして、片道2時間ほどかかりました。最後の乗りかえ駅からは、1時間に1本、野原をのろのろ走る1両きりの小型電車でした。電車を降りるとお寺までは急な上り坂で、夏は、ほこりの舞う、熱くなったじゃり道を、空をにらみながら木陰をたどって歩きました。‥だから、中田喜直『夏の思い出』の「はるかなオゼ、とおいそら」は、中学校の音楽で習うまで、ずっと「小瀬」だと思っていました。
 本の中には、大仏を作るのに民衆が犠牲になってひどい目にあった、と書いてあるものもあります。犠牲者は出たと思いますが、それは難工事にはつきもので、お墓の番人の話とずいぶん違う印象を受けました。平城京で見つかった木簡(木片に書いた文書)の研究などでは、大仏は天皇だけでなく、大勢の民衆の力が集まって出来たらしいと分かってきたようですが‥。
 「夏がくれば‥」を聞くと、思い込みのこわさ、学ぶことの大切さなど、いろいろな事を思い出します。中学最初のあなたの夏はどんな夏になるのでしょうか。


(写真上は小瀬の「行基の墓」、下は尾瀬ヶ原ミズバショウ、)


<今日の学習と宿題>
(省略)

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